前にZIP!で、松任谷由実さんがインタビューで話していたんですが。歌詞について、「『愛してる』とか『悲しい』とか、そういう感情を直接その言葉を使わずにアイテムを使って表すようにしてる。『ルージュの伝言』は映画で鏡に口紅でさよならのメッセージを書くところが印象的でそれを歌詞に使いたかった。『バスルームにルージュの伝言』というフレーズも『鏡』とか『口紅』という直接的な単語は使っていない。使っていないけど、その方が聴き手側が映像として思い浮かぶかな、と思った。」みたいなことを話してたと思います。たぶん。朝の準備をしながら聞いていたのでうろ覚えですが(笑)ニュアンス的にはたぶんこんな感じだったと思います。朝の準備で忙しいながらも「なるほどな~」と思って聞いてました。私、松任谷由実の歌詞で好きなフレーズがあって。


冷たくされて いつかは見返すつもりだった
それからどこへ行くにも
着飾ってたのに
どうしてなの 今日に限って
安いサンダルを履いてた /DESTINY


このフレーズ、めちゃくちゃ切なくないですか?この歌詞も「切ない」みたいな直接的な単語を使わず、安いサンダルという絶妙なアイテムを使ってその感情を表してます。さすがですよね。


稲葉さんの歌詞にもこういうアイテムを使ったものってなんだろう?って考えたんですけど、結構ありますよね。まず最初に思い付いたのが

明け方の夢の中だけじゃなくて
文字だらけの画面の中でもなくて /Touch


この歌詞も、「メール」という直接的な単語は使っていません。「文字だらけの画面」って言った方がなんか無機質な感じが出てますよね。

たばこくわえ 電話にらみ
男は送るヒミツのメッセージ /SAIHATE HOTEL


「メッセージ」というともしかしたら留守電のメッセージを入れてるのかな、とも思いますが、留守電の場合だと電話は耳に当てているので電話をにらむことはできません。「電話にらみ」「ヒミツのメッセージ」で「メール」という単語を表現してます。「Touch」の場合は無機質感、「SAIHATE~」の場合はちょっとドキドキ感があって、同じ「メール」のことを言っていても印象が違います。

SAIHATE HOTELって歌詞に出てくるアイテムが絶妙だと思うんです。特にあのアイテムが絶妙だと思ってます。みなさんもそう思いませんか?









ショパン



この「ショパン」というアイテムが出てくるのと出てこないのとではこの歌詞の印象って全然違うと思うんです。「たばこ」「電話」「ショパン」というこの3つのアイテムから「男」の雰囲気を表してるし、歌詞全体の雰囲気も彩ってる気がします。

「無音の劇場」「おおげさなドラマをつくること」と歌っているように、歌詞全体がドラマのような、映画のような、そんな雰囲気にしています。「ボク」と「君」が、一部分だけ「男」「女」になっているのも「ボク」と「君」が役者になっている雰囲気がします。そこに「ショパン」なわけですよ。FMでも歌謡曲でもない、「ショパン」なところが歌詞全体の雰囲気を強く印象付けてる気がするんです。

これはアイテムとは関係ない話なんですが。 「窓にうつるのは自分の亡霊」という表現も好きです。比喩表現が「自分が亡霊のように映ってる」という直喩じゃなく(直喩にするとちょっとホラー・笑)、隠喩になってるのがいいな~って。で、そのあと「生きてることに気づかないけどかまやしない」と、亡霊に続きこちらも半分死んでるような、そんな歌詞が続きます。でもこれらの歌詞って次のフレーズを際立たせるための前フリなのかなって。

恋に落ちるということは もう少し生きたいと願うこと

恋に落ち、不安まみれ、眠れない、亡霊状態になって。それでも待つ。完璧なプラス思考じゃない。ほんのわずかな米粒ほどの前向きさが泣けます。そして誰かがノックする気配がして男が立ち上がる、この物語のラストシーンがまたいいじゃないですか。

ねー!SAIHATE HOTELっていいでしょー!!このSAIHATE HOTEL、2016年8月3日にリリースされる DVD & Blu-ray「Koshi Inaba LIVE 2016 ~enIII~」に収録されてますので、みなさんもぜひご購入ください!! (無理やり着地)

Koshi Inaba LIVE 2016 〜enIII〜[Blu-ray]
稲葉浩志
VERMILLION RECORDS(J)(D)
2016-08-03